狩の名手レディ・ブラウン
成虫になるカマキリのことごとくが強運の持ち主であり、間違いなく狩の名手なのだと思う。
2022年にウッドデッキに長期滞在した茶色いカマキリ「レディ・ブラウン」は、その狩の一端を見せてくれた。
以前にも紹介したレディ・ブラウン。彼女の狩場は建物南面に伸びたウッドデッキとそれを覆う葡萄の茂みだ。去年の秋ウッドデッキに生みつけられた二つの卵嚢のどちらかから春に孵化したのだと思う。もしかするとウッドデッキから降りたことがなかったかもしれない。葡萄には芋虫やアマガエルをはじめ多くの生き物がやってくる。それらを狩るのだ。
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今年、雌雄合わせて少なくとも10匹以上の成虫に庭で出会った。ただ、彼女の翅にポツリとあったホクロのようなわかりやすい識別子を持つものは、彼女のほか緑型のスカーしか見つけられなかった。
成虫でも、鳥や同族から捕食される危険はあるわけで、いつ会えなくなるかわからないから毎日のように写真をとった。
姿を見せない日が続くと、死んだのかと思う。そんなタイミングで葡萄の株元近くで死んでいる茶色いカマキリを見つけた時には、ついにレディ・ブラウンの命も尽きたかと、ナムナム唱えてしまった。
そして翌朝、ひっそりした心持ちで庭に出るとレディ・ブラウンがいるわけだ。なんだ生きていたか。
執念の追跡と忍耐の待ち伏せ
このウッドデッキで成虫を5匹は見かけたと思う。
そのうちの1匹は産卵後にレディ・ブラウンと鉢合わせし、追跡されたのちに彼女に喰われた。2匹が顔を合わせてほぼ丸一日かけて決着。返り討ちされる危険を冒してのチェイスだった。
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あるときは、日光浴中のツチイナゴがターゲット。写真の下方にいるツチイナゴを撮影中、上方の屋根に張り付いているレディ・ブラウンに気がついた。日暮れ前にもう一度離れたところから確認したけれど、両者ほとんど動きはない。
しかし、レディ・ブラウンが動いていないからこそ、ハンティングが始まっていると認識した。
そして、翌朝、落ちていたツチイナゴの片足。
ツチイナゴは夜露を凌ぐべく葡萄の葉裏で夜を過ごす。そこを狙われたか。
冬のカマキリ、日光浴が日課になる
葡萄の落葉が日に日に進み、日差しのある日中じっと背中を暖める姿を見ることが多くなった。
風雨を凌いでウッドデッキの屋根裏に張り付いていることもあった。日差しが出ればすぐに暖まる場所だ。
そして12月10日に初めて建物側に移動した。こちらのほうが寒さを凌ぎやすいのだと思う。
ただ、手前に写っているプチプチは植木鉢を囲い込んだ簡易温室。3日に1回は人間がそばを通るので落ち着けないかもしれない。ごめんよ。
以前、建物南面のこの網戸で新年8日まで生きたカマキリがいた。頑張れレディ・ブラウン。
彼女は数日を網戸で過ごし、12月13日に床に降りた。
そして翌日から姿が見えなくなった。